Creemとは

Creemは、AIネイティブなソフトウェア企業向けに設計されたマーチャント・オブ・レコード(MoR)だ。

エストニア・タリンに拠点を置き、決済、消費税、請求、アフィリエイト、収益分配、ペイアウトをひとつの契約で引き受ける。

料金は売上の3.9%+40セントのみで、月額費用も初期費用もない。出典

2026年9月にはInovo VCがリードする€5Mのシードを調達し、累計調達額は€6.8Mに達した。出典

ストーリー

創業から成功に至るまでの道のり。

2026年9月、Gabriel Ferrazが率いるCreemは、1年で売上を2倍以上に伸ばしてARR €2Mを超えたタイミングで、Inovo VCがリードする€5Mのシード調達を発表した。

決済、税金、請求、収益分配をまとめて引き受けるマーチャント・オブ・レコード(MoR)を、AIエージェントが操作する前提で作り直した会社だ。出典

蚤の市から暗号資産、そしてタリンへ

Ferrazが最初に報酬を受け取ったのは12歳のときで、ブラジルの蚤の市の売り台だった。

16歳で大学を離れて暗号資産の世界に入り、同国で暗号資産に特化した開発会社を立ち上げ、決済プラットフォームの取扱高を€180M以上まで伸ばした。

2019年にバルト三国へ移り、タリンを拠点にした。出典

GoogleとAdyenの出身者が組む

Creemを創業したのは、GoogleとAdyenの出身であるGabriel FerrazとAlec Erasmusの2人だ。出典

2024年10月の時点でチームは1人しかおらず、翌年1月に3〜4人、そして現在は15人前後まで増えた。出典

公式サイトにはCFO、COO、CTOを含む16人の名前が並び、「部署を置かない」体制を掲げている。出典

pre-seedから1年でARR €2Mへ

2025年8月、Practica Capitalがリードし、Antlerとエンジェル投資家が参加する€1.8Mのpre-seedを調達した。

1年後の2026年9月17日、Inovo VCがリードする€5Mのシードを発表し、累計調達額は€6.8Mになった。

同じ1年でARRは2倍を超えて€2Mに達した。出典

「逆を行く」という選択

調達発表でFerrazは、競合の方向を明確に否定している。

「多くのスタートアップがエージェントのワークフローやエージェント決済を作ろうと競争している。私たちは逆を行った。Creemは、創業者が好きなエージェントを持ち込み、そのエージェントに店舗の運営と最適化を任せられるようにする。売上が伸びても、人員を増やさずに済むようにするためだ」と語った。出典

Creem 2.0と呼ぶ現在の姿は、自前のAIモデルを売るものではない。

課金、税務、アフィリエイト、収益分配、返金、ペイアウトといった店舗運営の操作をAPI、CLI、MCPとして公開し、顧客のエージェントがそれらを実行する。

Ferrazは「私たちはモデルを提供しているわけではない。AIエージェントが必要とする情報とツールにアクセスできる土台を作った」と説明している。出典

乗り換え先として選ばれる

顧客の多くは、他の決済事業者からの乗り換えだ。

Uneedの創業者Thomas Sanlisは、1,500行を超える決済コードの書き換えを数分で終え、「エラーも問題も一切なかった」と述べている。

DaisyUIのPouya Saadeghiは、他の決済事業者になかった収益分配機能を理由に、1日未満で移行した。出典

小さなチームで売るための土台

Creemが解いているのは、コードは週末で書けるのに、売り始めるための税務・請求・支払いの配線に時間を取られるという非対称だ。

Ferrazは「以前は製品を作るのにチームと1年が必要だった。今は1人とエージェントで週末にできる」と語る。出典

開発の速度に、販売のインフラが追いついていない。

そこに需要が集まっている。出典

独自分析

PMF (プロダクトマーケットフィット)

Creemが刺さるのは、コードを書く速度と売り始める速度の差に悩む小さなソフトウェアチームだ。

決済、消費税、請求、返金、ペイアウトを別々のサービスで配線すると、各国の税務と不正対策の運用が founder の時間を食う。

CreemはMoRとして販売主体そのものになり、その運用を引き受ける。出典

料金は売上の3.9%+40セントのみで、月額費用も最低取引額もない。出典

既存MoRが5%前後+固定費を取るなかで、売上規模の小さいチームほど差額が効く。

実際にUneedはPolarから、DaisyUIは別のMoRから移行し、移行作業の短さを公開している。出典

さらに2026年は、購入判断の一部が人間からエージェントへ移りつつある。

課金操作をAPI、CLI、MCPとして出し、顧客のエージェントに店舗運営を任せられるようにした点は、この変化に合わせた設計だ。出典

参入障壁 (Moat)

参入障壁は、MoRとして各国の税務と決済の運用を実際に引き受けている点にある。

規制対応と与信、返金処理はコードを書けば済む話ではなく、運用の蓄積が要る。出典

加えて、エージェント向けに課金操作をMCPとCLIで公開した実装は、後発が真似するのに設計の作り直しを伴う。出典

ネットワーク効果

ネットワーク効果は弱い。

買い手と売り手が同じ場所に集まる市場ではなく、各社が独立に導入するB2Bツールだからだ。

ただしアフィリエイト機能と収益分配は、紹介者と被紹介者が同じ決済基盤に載るほど運用が楽になり、弱いながら局所的な効果は生まれる。出典

ターゲット

対象は、1〜10人で世界向けにソフトウェアやデジタル製品を売るチーム。

個人開発者、AIプロダクトを作る小規模スタートアップ、OSSを収益化したいメンテナなどだ。出典

一方、調達や与信を自社で握りたい大企業、決済手数料を限界まで下げたい大規模事業者、独自の税務体制を持つ企業は対象外に近い。

成功要因

第一に、料金の単純さ。

3.9%+40セントの定率のみで、月額も最低額もないと明示している。出典

第二に、乗り換えの摩擦の低さ。

SDK、CLI、API、MCPを揃え、移行手順をドキュメントで公開している。出典

第三に、創業者が表に出るサポート。

Discordで直接やり取りする体制を差別化として掲げている。出典

失敗・課題

リスクは小さいチームでMoRの規制対応を抱えることだ。

190か国超の税務、不正対策、チャージバックの運用は人数に比例して重くなる。出典

料金の低さは競合の追随を招きやすく、PaddleやPolar、Stripe系の値下げ圧力に晒される。出典

ARR €2Mやチャーン率は報道ベースで、公式に開示された継続率は確認できない。

エージェント経由の課金は決済手段としての成熟がこれからで、需要の読み違いも起こりうる。

グロース戦略

獲得はコンテンツとドキュメント、そしてコミュニティが中心だ。

料金比較、税務、請求の実務記事をブログで積み上げ、開発者向けドキュメントとCLIで導入の敷居を下げる。出典

Discordで創業者と直接話せることを差別化に置き、乗り換え事例を顧客ストーリーとして公開する。出典

有料広告より、乗り換え時の比較検討で見つかる導線を太くする戦略と読める。

トレードオフは、認知が開発者コミュニティに偏り、非技術の事業者へ届きにくいことだ。

主要チャネル: content_seo, developer_docs, discord_community, agent_mcp, word_of_mouth

学べること

学べるのは、価格表そのものを差別化にする力だ。

同じMoRでも手数料と最低額の条件を明示するだけで、比較検討の入口を取れる。出典

もう一点は、新技術の受け入れ方を「自分で作る」ではなく「顧客の道具に開放する」と選んだこと。

エージェント時代の製品設計では、自前のAIを売るより、外部のエージェントが操作できるインターフェースを整えるほうが速い場合がある。

日本で展開するなら

日本では、個人開発者や小規模チームが海外向けに売るときの消費税と請求の負担が大きい。

MoRとして販売主体を引き受ける形は、インボイス制度と各国税務の運用を外部化したい層に噛み合う。

日本の決済事業者が同じモデルを出すなら、料金の単純さとエージェント向けインターフェースの公開が差になると考えられる。

主な競合

Timeline

創業から成功に至る道のり。転機ごとの収益・調達・バリュエーション (出典あり) も併記します。

  1. Creemがタリンで創業。この時点のチームは創業者1人だった出典

  2. Practica Capitalがリードする€1.8Mのpre-seedを調達出典

    • 調達 $1,800,000
    • Pre-seed
    • Practica Capital, Antler
  3. ARRが1年で2倍超の€2Mに到達。チームは1人から15人へ拡大出典

    • ARR $2,000,000
  4. Inovo VCがリードする€5Mのシードを調達。累計調達額は€6.8Mに出典

    • 調達 $5,000,000
    • Seed
    • Inovo VC, Practica Capital, Antler, Markus Villig, Timmu Toke, Kaspar Tiri, Adam Jafer, Fryd Wiatrowski

ポジショニング

分析で挙げた競合プロダクトとの相対位置を示しています。

低価格・セルフサーブ寄りで、決済から成長施策まで横に広げるMoR。

参考リンク

関連プロダクト

Payments / MoR

Dodo Payments

Dodo Paymentsは、インド・ベンガルールを拠点にするMerchant of Record(MoR)だ。決済処理だけでなく、消費税やVATの計算と納付、不正利用のスクリーニング、チャージバック対応、サブスクリプションや従量課金、クレジット課金までを1つの契約で引き受ける。開発者は決済用のインフラを自前で組まずに、AIプロダクトやSaaSを世界で販売し始められる。2024年11月にベータ版を公開し、2026年10月時点で50,000以上のビジネスが220以上の国と地域で利用している。

India · 2024 年 · 出典 15

#SaaS#Payments#merchant-of-record

Payments / MoR

Freemius

Freemiusは、ソフトウェア開発者に代わって決済・サブスクリプション・ライセンス・各国の売上税を処理するMerchant of Record(MoR)だ。WordPressプラグインやテーマの販売基盤として始まり、現在はデスクトップアプリやSaaSにも対象を広げている。100カ国以上・2,000超の製品を支え、導入は数分、売上が発生したときだけ手数料を払う。

2015 年 · 出典 20

#Tax Compliance#SaaS#Payments

Payments / MoR

FastSpring

SaaS・software・digital goods企業の海外販売で、決済、subscription、税務、fraud、complianceをMerchant of Recordとして引き受けるglobal commerce platform。

United States · 2005 年 · 出典 12

#SaaS#Payments#Global Commerce

Payments / MoR

GoCardless

GoCardlessは、カードネットワークを介さず銀行口座間での定期・単発決済を回収できるpayment platform。Direct Debit、Pay by Bank、API、350以上の連携を組み合わせ、請求業務と失敗決済の回収を自動化する。

United Kingdom · 2011 年 · 出典 18

#Payments#fintech#bank payments